夢をかなえたいか|第1話 捨てるものを決めろ!

 

それは、1977年(昭和52年)の冬。

日本では経済も豊かになり、安定成長を遂げていた。高度成長による奇跡の復興により、日本の市場は急激に活性化していこうとしていた時期である。
1970年頃から世界各国でバブルが起きていた。世界中のバブルには、世界的には有名なチューリップ・バブルなどがあり、その数130とも言われていた。

両親もそのトレンドに乗り、株取引なども始め、生活的にも豊かだった時期だった。

ちなみに1989年バブル絶頂期の日本の世界時価総額ランキングがこちらだ。

 

「バブル期の時価総額」の画像検索結果

 

今では考えられないほど日本企業が占めている。
NTTが世界のトップに位置していたのだ。

そりゃあ、日本人が浮かれるのも分からないでもない。

 

そんなバブルが始まりつつある時期に私が生まれた。

母の話によると、私が生まれる直前、夢の中に神様が出てきたと言うのだ。
そして、豊かな生活に浮かれていた両親にこう告げたというのだ。

神 「おいおい、あんまり浮かれてたらあきまへんで。今からもっともっと日本は信じられないようなスピードで豊かになる。あんた達はそれに乗じて儲けてエエ思いもすると思うねん。せやけどな、そんなもんいつまでも永久に続くと思うとったらバチあたりますさかいに。強欲にならんと、しっかりやっていかんと痛い目みまっせ」

母 「だ、誰ですの?あんた・・・」

神 「あんたって誰に言うとるんや。わしは神様や」

母 「神様いうたかて・・・イカの化けもんにしか見えへんわ」

神 「ば、化けもんやと。誰が化けもんや。わしは地球の根源、大地の源、大海原から育まれてやってきた海の神様や。まあええ、今日は時間ないからな。あんな、お前んところにもうすぐ男が生まれる。その男がな、どうしようもあらへんのや。口ばっかりで何も自分でやろうとはせえへん、平成の駄目男や」

母 「平成・・・? はあ・・・まあ、生まれてくるんは男の子なんですね」

神 「そや。そいつはろくでもななでもない奴に育つからな。だからな、オカンのお前がしっかりせなあかんのや。バブルに浮かれて贅沢しとったら痛い目に合うからな。せやからこうやってわざわざ太平洋を渡って忠告しに来たんや。分かるか?」

母 「いや、全然分かりまへん」

神 「なんやそれ。息子も息子なら、親も親やな。まあええわ。とにかく、今の内に金は溜めとき。周りの奴らと一緒に豪遊しとったら、バブルが弾けてみんな一斉にお陀仏や」

母 「え、今では世界一の経済成長率を誇る日本が急にあかんようになると言うんですか?」

神 「そういうこっちゃ。まあわしはいつバブルが弾けるかは知っとるけど、それは言われへん。でもな、何度も言うとくわ。とにかく金は置いとき。悪いことは言わへん。分かったか」

母 「はあ・・・」

神 「とにかく今から倹約して、できるだけ質素に暮らすんや。金持ちが一気に借金地獄に陥ることがある、あれはなんでか分かるか?あれはな、金持ってる時の贅沢な生活習慣が金がのうなっても変えることができへんからや。人間っちゅう生きもんはほんまにアホやからな。金もないのに見栄だけ張るんやから。まあ、そういうこっちゃ」

母 「・・・分かりました。できるだけ無駄遣いせんようにします」

神 「よっしゃ。分かったらエエ。とにかく金残しときや、バカ息子のためにもな。おっ、時間が来たわ。しっかり守るんやで。また40年後くらいに様子見に来るわ、ほなな」

と言ってその神様は帰ってったらしい。

でもうちの母は、そのイーカげんな神様の言うことは何一つ守ることはなかった。贅沢三昧の生活を続け、やがてバブルが弾けた。
夢の中に変てこな神様が現れて丁度12年目、1989年(12月29日)の大納会に日経平均株価は最高値38,915円87銭を付けたのをピークに暴落に転じた。

その後も下落は続き、1990年10月1日には一時20,000円割れと、わずか9ヶ月あまりの間に半値近い水準にまで暴落した。路線価も1992年中頃をピークに暴落し、バブルは崩壊していった。

「バブルの崩壊」は、あるとき一瞬にして起きた現象ではない。

バブル崩壊は、開始から数年間をかけて徐々に生じた過渡的現象である。崩壊は1991年10月ごろ始まったが、必ずしも誰もが直ちにそれを体感したわけではない。
バブルの崩壊を経済学的現象ではなく深刻な社会問題ととらえるとき目安となる時期は1993年ごろであり、それまでは(事実としてバブル崩壊が始まっていたにもかかわらず)それを認識できずに楽観的でいたり、そうでなくても、まだ持ち直すかもしれないと期待していた。

正に人間の愚かさだ。
平成2年には既に崩壊は始まっていたのに認識できずに居た人間たち。株価が暴落して土地は下落、倒産が相次ぎ、何年も経過してから振り返って、崩壊だったと気が付くのだ。

絶対的と信じられていた土地神話が崩れ去ったのだ。

それが私が中学生だった頃の話だ。
裕福だった子供の頃の記憶は、ほとんど残ってはいない。

 

そんな私はもう40歳。

今までやってきた仕事と言えば、建築関係や不動産関係、教育関連などなど、主に営業畑でやってきた。途中は雀荘なんかでも働いたりもしたけど、これといって何の成功も収めてない、いわいわゆるイケてない未婚のアラフォー、中年駄目男だ。
そして東京で3年ほど働いていた会社も辞め、久しぶりに関西に戻ってきたのだ。

とりあえず帰ってはきたものの、何をしたらええのかまだ見付からない。

今日は暇を持て余してたので、東京では一切行くこともなかった趣味の釣りに出掛けることにしたのだ。

何を釣りに行ったかって?

この時期は、夏の高水温も落ち着き、春に生まれた子イカの数釣りが楽しめる時期。生まれたばかりの子イカは成長の為に多くの餌を食べるし、エギや仕掛けに対する警戒心も薄いため、良く食いつくと言われている。
正にイカ釣りのシーズンだ。

結果は・・・

なんか、見た目の悪いブサイクなアオリイカ一匹だけ。まあ久しぶりやからこんなもんでしょ。
そのイカを取りあえず水槽に移し、ベッドの上でゴロンと仰向けに寝転んだ。

「はあ・・・なんかオモロイことないかなぁ・・・」

こんな私にも夢がある。死ぬまでには一度は結婚・・・もしたいのではあるが、男である以上、一度は成功を掴み取りたい。そうは思っている。
だけど、どうやったら成功できるのかが未だに見えてこない。どうなれば成功と言えるのかも曖昧な自分もいる。

とにかく、成功哲学や自己啓発書なんかも読み漁った。
自己啓発セミナーなんかも行っていた時期もある。

でも、未だに成功は掴みとることは出来ていない。それどころか無職で一人もん、人生の落第者だ。
今も家ではパソコンをいじっっては、腹が減ったら飯を食い、疲れたら寝る。起きたらまたパソコンでネットサーフィン。ホリエモンの動画なんかを見ては自分探し。相も変わらずこんな生活をしている。

「あー、何やってんやろ、俺・・・」
目を閉じて、いつもの自暴自棄タイムに入ってしまう。

「どうやったら成功できるんやろ・・・」
そう思いながら、深い眠りに落ちる。

 

何時間ほど眠りについていたのだろうか。夢の中から声が聞こえる。

「おーい、出来損ない君~。何やっとんねん。お前の両親に言うとったやろ、贅沢すな、金は置いとけって。おもいっきりバブルはじけたあおりイカくらいやがって。で、お前は何しとんねん。おーい、おーい。」

私は思わず飛び起きた。

「なんや、なんや。変なもん夢に出てきよったわ。なんかあおりイカがどうとか言うとったな・・・気持ち悪いわ。まあ、夢やからエエか・・・」

 

 

イカの怪物 「何が夢やねん」

私 「ひ、ひ、ひ~! か、か、怪物~」

イカの怪物 「誰が怪物やねん。わいは神様や。40年ぶりに帰ってきたんや」

私 「神様?どこが?どうみてもイカの怪物やん」

自称神様 「なんでやねん。神様にたいして言う言葉か! ・・・まあええ。お前、成功したいんやってなあ」

私 「成功・・・?はあ、成功ねぇ・・・」

自称神様 「だから、成功したいんかって聞いとんねん!しゃんとせえ!!」

私 「は、はい!成功したいです」

自称神様 「よっしゃ、わかった。成功させたる」

私 「ほんまですか?俺、今まで色んな成功哲学とか学んできたけど、全然ダメやったんすよ」

自称神様 「お前はアホか。成功哲学なんか読んで成功できたら世の中成功者だらけや。大体が頭でっかちになって終わりや」

私 「はあ・・・」

自称神様 「とにかくな、わしの言うこと聞いたらええねん。明確な目標設定とかいらんからな」

私 「でも、どの本にも明確な目標設定って・・・」

自称神様 「自分あほやな、ほんま。今の自分が明確でないのに、そんなもん設定できるわけないやろ」

私 「まあ、確かに・・・」

自称神様 「ええか。とにかく小さなことからコツコツ変えていくんや」

私 「小さなことから・・・」

自称神様 「そうや。わしがな、お前に課題を与えていく。それを1つずつクリアしていくんや」

私 「1つずつ・・・一体何をやれば」

自称神様 「まあ、あわてんなや。その前に、イカの怪物やら自称神様やら、読み方なんとかせえ」

私 「はあ・・・じゃあ、お名前はなんていうんすか?」

自称神様 「よう聞いてくれた。わしは成功の神様、『いか様』や!」

私 「そのまんまやん。しかも『様』付けることでさらに胡散臭くなっとるやん。なんかイカ臭いし・・・」

いか様 「このゲソ野郎!!何が胡散臭い、イカ臭いんじゃ。臭いんは塩漬けにされた時だけや!あほんだら、あほんだら、あほんだら!!」

私 「割と気にされてるんですね。体臭・・・」

いか様 「おどれ、塩辛にして食うてまうぞ!お前のその足、ゲソ焼きにして食うてまうぞ!一杯のアテにしてまうぞ!!よし、よう分かった。成功したくないんやな。ほお、よう分かったわ」

私 「すんません、すんません。俺、成功したいです」

いか様 「ほんまか?イーカげんなこと言うてないやろなあ」

私 「はい!成功したいんです、俺!」

いか様 「始めから素直にそう言えや。よし、わかった。わしが何とかしたる」

私 「で、何をすれば・・・」

いか様 「そやな、まずは成功者がやってることをやって、やってないことはやめることやな」

私 「はあ・・・」

いか様 「うん、それだけでええ。成功に関係しないことは徹底してやらんことや」

私 「徹底してやめる・・・何をやめたらええんすか」

いか様 「そやな・・・それを次までに考えとけや」

私 「はあ・・・次までですか。」

いか様 「そや、次にわしが現れるまでに考えとけや。とにかく今やってることで成功に関係ないことは排除するんや」

私 「は、はい、分かりました。やってみます」

いか様 「よっしゃ。そんな素直な心は大切や・・・あ、あかん。そろそろ時間や。体が干からびてきたわ。このままやと一夜干しになってまう」

私 「あら。そういえば少しカピカピになってきましたね」

いか様 「そや、時間は有限なんや。じゃあ最後にお前に『成功者の言葉』を授けたろ」

私 「成功者の言葉・・・ですか?」

いか様 「そう。失敗するたびに逃げ出したり、諦めたり、自暴自棄になったり、自分だけ不幸を背負い込んでると勘違いしてきたお前にピッタリな言葉や」

私 「ひどい言いようですね。まあ確かに自分はいつも運がないと思ってますから・・・」

いか様 「せやろ。そんなイカれた勘違い野郎に送る言葉はこれや」

 

私 「おお・・・」

いか様 「どや。胸に突き刺さったやろ。取りあえず人間、生きてるだけで儲けもんや。」

私 「確かに。そう考えると何かやる気出てきましたわ」

いか様 「そやろ。失敗なんて大したことあらへん。昔に悩んだことを今でも悩んでるっちゅうことないやろ。そんだけ大したことないっちゅうことや」

私 「確かに。昔は死んでもええわって思えるほど悩んだことも、今では何で悩んどったかもあんまり覚えてないし・・・」

いか様 「そういうこっちゃ。ええな。この言葉を胸に、次会うまでに捨てる『モノ』でも『コト』でもええから考えとくんやで」

私 「分かりました、いか様!」

いか様 「よっしゃ、ええ調子や。その調子でしっか・・り・・・ あ、あかん・・・体があたりめみたいになってきよった。じゃあ、しっかりせえよ。ほなな・・・」

 

 

そう言い残していか様は慌てるように水槽へと戻っていった。

なんだかよく分からない一連の出来事だった。本当に信じて良いのかどうかさえも。

ただ分かったのが、いか様は一時間くらいでスルメになってしまうことだ。
あと、ちょいちょい会話に「イカ」を絡ませてくるオヤジ会話の使い手だということくらいだ。

まあいい。
とにかく今の自分の殻を破りたい。
掴めるものなら、藁でもゲソでも掴みたい状況だ。

とにかく私は早速考えてみることにした。成功のために何が捨てれるのかを・・・

[第2話に続く]

 

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