夢をかなえたいか|第2話 ギャンブルをやめろ

 

「どや、捨てるもん決まったんかいな」

突然、いか様が何の前触れもなく私の前に現れた。今日も特別やることがない私は、昼間からパソコンで趣味に興じていのだが、あまりの急な登場に不覚にもあたふたと慌てた様子で画面を閉じた。

「い、いか様、なんやねん。普通は登場するときって何かの予兆か予告音でも鳴らすもんやろ」

「あほう。魚群予告でも出したらええんかい!・・・ん?ちょっと待てよ。なんか今えらい慌てとったな」

私は一瞬パソコンの方に不自然と目をやった。

「お、おう・・・ちょっとパソコンで調べもんしとっただけやん」

さすが神様、私の不振な動きを感じ取ったと思えば、何本あるか分からない粘着質の足を引きずりながら体をくねらせ歩み寄ってきた。

「なんやなんや。調べもんやったら続けとったらええやないか」

「いやいや、別に大したもん調べとらんし・・・」

「おうおう、なんか怪しいのう。さては・・・」

いか様は不敵な笑みを浮かべ私に詰め寄った。

「さては・・・」

「な、なんやねん」

「さてはイカがわしい動画でも観てたな、この中年おやじ。ガハハ」

いか様は、右端と左端の足をまるで両腕のように腹を押さえて大笑いし始めた。さすがの神様も私がしていたことまでは水槽からは見えていなかったようだ。

「は?違うわ」

なぜか私は強がった。その強がりがいか様の表情を険しくさせた。

「ん?じゃあ何やっとってん」

「だから、ええっちゅうねん」

いか様の前足2本(どれが前足かは定かではないが・・・)が私の体を押さえつけ、別の前足でパソコンの画面をこじ開け、強めの口調でこう聞いてきた。

「おい!何やっててん」

「別にええやろ」

「何やねんこれ・・・水遊びの映像か?」

私は2秒ほど言葉に詰まったが、「水遊び」の一言で、もしかしたらいか様は人間界の遊びを知らないかもしれないと良いように勝手に解釈し、粘着質の足を振り払い得意げにこう言った。

「そうや。こうやって水を眺めるんが気持ちを落ち着かせる効果があるんや」

「ふーん・・・」

妙に納得した表情に変わったいか様。

だが次の瞬間、鬼のようなイカれた顔つきに変化してこう言い放った。

「競艇やっとったんやろがーーー!!」

 

「な、なんや・・・知っとったんかいな。引っ張らんと早よ言うてや」

「この、イカれ野郎が!!」

どうしても「イカ」のワードを絡ませたいようだ。

「いやいや、これは唯一の趣味で・・・。ほんま数千円ほど遊んでるだけやから」

いか様の表情がまるでタコのように真っ赤に変化する。

「おどれ、何様や。ギャンブルしてる立場かいなお前はっ!!」

罵声とともに私の顔にいか様のツバが飛び散る。ん?これはツバなのか・・・なにやら黒く生臭い液体だ。

(やばい・・・スミだ。こんな所でイカスミなんか吐かれたらたまったもんじゃない・・・)

そう思った私は慌てて、

「いか様、すんませんでした。本当にすみません」

「・・・」

「いや、本当に、ちょっと魔が差しただけで・・・」

「・・・」

「だから、あの、その・・・あっそうや!捨てるもの決めたんで、その話しましょ」

「あかん。ワシも色々とは話すこと考えとったんや。でもな、お前がイカのスミにも置けん奴やとよう分かったわ。何を捨てるだと?まずはギャンブルやる習慣を捨てい!」

「ギャンブル言うてもホンマにちょこっとしか賭けてないねん。パチンコも1パチしか最近やらへんし・・・」

駄目だ。いか様の表情がタコの赤色を超え、赤紫色へと変わっていく。

「あほんだら!金額の問題ちゃうねん。ギャンブルは金よりももっと大切な物を失う。何か分かるか?」

「分かりませんっ!」

「そ、即答やな。ちょっとは考え!ええか、ギャンブルで失う大切な物、それは『時間』や」

「はあ・・・」

「人間の寿命は昔と比べて延びた言うても、日本の男の平均寿命は81歳や。お前、ちょうど折り返しの年齢やろ。人間の時間はお金には変えられへんのや。人が死ぬ前に一番悔やむものは何か知ってるか?『ああ、金残してもうたわ。もっと使っときゃよかった・・・』なんて思わんからな。皆が悔やむのは『あの時、もっとこうしておけばよかった・・・』時間を悔やむんや」

いか様は、アゴをさすりながら続けてこう言った。

「ところでお前、本田宗一郎は知ってるやろ」

「はい。世界のHONDAの本田宗一郎ですよね」

「そうや。Mr.本田はな、時間についてこう言ったんや」

「本田宗一郎 時間だけは神様が平等に与えて下さった。これをいかに有効に使うかはその人の才覚であって、うまく利用した人がこの世の中の成功者なんだ」の画像検索結果

 

「分かるか?お前、この前、成功したいって言うとったやんなあ。俺の聞き間違いか?」

「いや、確かに言いました」

「ほならなんで時間を大切にせんのや。時間を有効に使うどころか、ギャンブルは時間をドブに捨ててるだけや。住之江の池に捨ててるだけや」

「確かにギャンブルはやめようとしたことは何度もあるんです。でもなかなかギャンブルから足・・・ゲソを洗えなくて」

ちらっといか様の顔を見た・・・少し笑いをこらえているようだ。そしてこう話した。

「わしもな、金も時間も余ってる奴がギャンブルするのには何の文句もあらへん。それと本気でパチンコをビジネスと考えて取り組んでる奴もまあまあ良しとしよう。でもな、今まで見てきた成功者の中で日々ギャンブルで時間と金を無駄にしてきた奴はおらんのや。」

「はい。そうだと思います。俺の周りでも競艇やパチンコにはまるのは大がい金のない奴らばかりです。」

「そやろ。ギャンブルは自分の大切な物を捨てる行為なんや。ヒロユキもこんなこと言うてるぞ」

ひろゆき「パチンコやる人ってバカなんですか?」 メディアが報じない、パチンコ業界のリアル

 

 

「いか様・・・!!」

 

私は、いか様の前に思わずひざまずいた。いか様は、無言で私をそっと見下ろしている。

 

「・・・・・・・・・・」

 

「俺・・・ギャンブルやめたいです・・・」

 

「安西先生バスケがしたいです」の画像検索結果

 

いか様は、私に優しく語るようにこう話しかけた。

「そうや。たった今からやめるんや。ただな、俺も今までバカとまでは言わんけど色んなアホを見てきて、やめる言うてやめられへんかった輩がぎょうさんおるんや。だからな、ギャンブルとはいかに金と時間を失う愚かな行為だってことをしっかり理解せなあかん。」

「そうですね。それが理解できればキッパリやめれかもしれません」

「その為には、ギャンブルがいかに馬鹿らしいかをお前に分からせなあかんな。・・・にしても、なんでこんな当たり前の事をレクチャーせなあかんねん。ホンマはもっと他の話せなあかんなと思うとったのに・・・」

いか様は呆れ顔で深くため息をついて、私の顔を蔑んだように見下ろした。

「すんません・・・よろしくお願いします」

「しょうがないな。じゃあ、今から説明するわ」

 


日本のギャンブルの還元率を知れ

日本のギャンブルの還元率は世界的に見ても非常に低いことで知られています。
では実際にどの程度の還元率・控除率なのか?
下記は「宝くじ」や「競馬(公営競走)」など日本国内で可能なギャンブルの還元率の一覧だ。

競馬  
還元率:74.1% 
法律:競馬法 
法の目的:畜産の振興

 

競艇   
還元率:74.8 % 
法律:モーターボート競走法 
法の目的:1 船舶産業の振興・2 公益の増進・3 地方財政の改善

 

競輪   
還元率:75.0% 
法律:自転車競技法 
法の目的:1 機械産業の振興・2 公益の増進・3 地方財政の健全化

 

オートレース  
還元率:74.8 % 
法律:小型自動車競走法 
法の目的:1 機械産業の振興・2 公益の増進・3 地方財政の健全化

 

宝くじ  
還元率:45.7 % 
法律:当せん金付証票法
法の目的:地方財政資金の調達

 

サッカーくじ(toto)  
還元率:49.6% 
法律:スポーツ振興投票の実施等に関する法律 
法の目的:スポーツ振興に必要な財源確保

 

パチンコ  還元率:85%前後

 

見ての通り、おおむね還元率75%以下となっている。還元率75%ってどういうことか、簡単に言えば、「(確率的には)1000円の払い戻しの時に750円しか払い戻されない。」という事だ。つまり250円は胴元の利益ということ。

そう考えると割に合わない気がするかもしれないが、その利益でギャンブルが運営されているので仕方ないとも言える。

ただ、少なくとも、日本のギャンブルはどれをやっても胴元に25%程度以上の手数料を払っている(だからその位の確率で負ける)という事は頭に入れておかなければならない。

最も酷いのは「宝くじ」や「サッカーくじ(toto)」で還元率50%以下。
還元率50%だと、もはや「1000円買った瞬間に500円捨ててる」のとそんなに変わらない。冷静に考えてみたら非常に馬鹿らしいギャンブルとも言るだろう。

「競馬」は還元率75-80%でこれは世界の競馬と比べてそれほど変わらない様だ。
競馬の場合は本人の予想能力・ギャンブル能力次第で勝ち越しも可能。しかし確率的には年間100万使って25万負ける計算なので、実際に年間トータルという人間は全体の2~3%未満と言われている。

「パチンコ」は店によりまちまちだが平均すれば還元率85%程度と言われている。
因みにパチンコは公営ギャンブルではないが、その市場規模は、21兆円以上とも言わる程の巨大産業。パチプロという人達が存在するように、パチンコは店の選定・釘・台・開店日狙いなど、努力次第で勝つことも見込める様だ。それはある意味ビジネスと捉えて多くの時間を費やすことができる人だけだ。

公営ギャンブルの中では比較的マシに見える還元率75%の競馬(公営競走)だが、こちらには実は落とし穴があるのだ。
宝くじ、サッカーくじには当選金に税金はかかりません。しかし競馬・競輪・競艇など公営競走には当選金に所得税・住民税がかかる。このため実効還元率はさらに低くなるのだ。厳密に計算してみると分かるのだが、実効還元率は58.5%となり、宝くじと大差なくなってしまうことを理解しておかなければならない。

以前、こんなニュースも話題になった。それは「3年間で約28億7000万円分の馬券を買い、約30億1000万円の払戻金を得た(トータルで約1億4000万円のプラス)男性に対し、大阪地検が”約5億7000万円の税金を脱税しているので払え”」と主張する裁判。得た額以上の税金を要求されたというのだ。
この事例を考えると、競馬をやるのが馬鹿らしく思えないだろうか。

いずれにしろ手数料や税金をこんなに取られる日本では、ギャンブルで勝ち越すなのは非常に困難なのだ。

 

成功者がギャンブルをしない理由

ベストセラー『Rich Habits(お金持ちの習慣)』の著者トム・コーリー氏は、お金持ちはほとんどギャンブルをしない。反対に、貧乏な人ほどギャンブルにのめりこむ傾向があり、散財すると述べている。

その理由として、お金持ちはお金を稼ぐことで大きなリスクを背負っており、単なる娯楽に過ぎないギャンブルに魅力を感じないということだ。

つまり、貧乏な人ほど生活にリスクがない、これ以上に奪われるものがないためにギャンブルでスリルを得る。「お金がないのにギャンブル?」と思われるかもしれないが、失うものがない人ほど借金をしてしまうのも、本当のリスクを知らないからなのだ。

パチンコを始めとするギャンブルは、お金持ちが最も重要視してるモノ、そう「時間」を失ってるのだ。
パチンコは長時間座って、当たるか外れるか分からないモノにひたすら台に向かって集中する。

成功者やお金持ちは知っている。パチンコで当たったとしても本質的には何も得られないことに。
パチンコで当たれば一時的には、大金が手に入るかもしれないが、その収入は一時的なお金だということを。
成功者やお金持ちが好むのは継続的に懐に入るお金なのだ。

つまりこれが自己投資であり、投資を意味する。自分に投資をしたりビジネスに投資をしなければ本質的には収入は増えないことを知っているのだ。と同時にお金と時間を同時に失うギャンブルは、長期的には大きな損失になることも理解しているのだ。

ギャンブルをやっても、自分には何のスキルが身に付かないことも知っている。身につく知識と言ったら、パチンコなら高設定が出る台が多少分かる、競馬なら血統や調子の良い馬の判断といったくらいだろう。こんなものは社会に出てもなんのスキルにもならない。つまり自分の収入を上げてくれる知識にはならないのだ。ビジネスセンス、スキル、知識を身につけなければ、成功できないことは明確だ。

ギャンブルを趣味や遊び、ゲームと言う人もいる。
言うならば、ビジネスも自分で戦略を考えて、ユーザーに価値を提供して対価を貰うといったゲームの中でも極上のゲーム。

成功者達はビジネスを楽しんでるので、パチンコや勝ち目の薄いギャンブルに見向きもしない。つまらぬ人々がパチンコ屋で消費しているあいだ、お金持ちは自分のビジネスに投資、自分自身に投資しているのです。「よく出る」と噂の繁盛しているパチンコ店で、一番儲けて成功しているのはその店の経営者であることを理解しなければならない。


 

「どや。当たり前のことばかりやけど、ギャンブルするアホらしさを再確認できたか」

「そうですね。成功するには無駄なギャンブルは辞めなあかんってことが分かりました。」

いか様は頷き、一つ咳払いをして話はじめた。

「そうゆうこっちゃ。成功者はな、収入につながらない「支出」、つまり消費を嫌うんや。その一方で収入につながる「支出」、つまり投資は好む。投資と言っても株式投資だけの話じゃなくて、本を買って知識を身につける、スキルを得るために何かを習う自己投資のことも言うんや。。そう言ったことには、お金持ちは惜しげもなくお金を使う。でもパチンコやギャンブルはどうなんやと言うと、成功者やお金持ちが最も重要視してるモノを失ってるっちゅうわけや。」

「つまり、ギャンブルは成功には何の役にも立たんってことですよね」

いか様は、私の顔を見ながら2度頷き、嬉しそうにこう言った。

「まあ、そう考えとったらええ。理解できてるやないか」

だが私にはまだ府に落ちないことがあった。ギャンブルをやってる人の中でも、ギャンブルは辞めた方が良いこと、長い目でみたら結局負けてしまうことを知っている人はたくさんいると思う。だが辞められないのは何故かということ。

「はい。理解できました。でも・・・『ギャンブルは馬鹿らしい』って分かっててもやめられないってのがギャンブルの恐ろしさですよね」

「確かにな。一度やめようと決心しても、またやり出す人間は多いからな」

「どうしたら、完全に断ち切ることができるんでしょう」

少し考えた様子でいか様はこう答えた。

「ギャンブル依存症は深刻な病気やからな。正直なところ依存症を治すような特効薬はあらへん。極端な話、ギャンブルのない国へ行くか、刑務所にでも入る以外方法はない」

「そ、そんなあ・・・」

「あと現実的に考えるなら、依存症の人が集まるグループセラピーや自助グループ等に参加するか、お前みたいに公の場で『脱ギャンブル』を宣言することも効果はあるやろう」

「つまり依存症という病気を治すというより、しっかり自分と向き合って逃げ道を無くすってことですね」

「そういうこっちゃ。そしてまずは1日、2日・・・1週間と我慢していくしかない。それがいずれ習慣になっていく。どうや守れるか?」

「はい。成功したいので守ります!」

「よっしゃ、頑張れ。まずは1週間守ってみい。今回はギャンブルせえへん人らには何の面白みもない話になってもうたけど、もし周りにギャンブルで悩んでる奴がおったら助けてやってほしい。そいつを卑下するのではなく、もっと楽しいことがあるっちゅうことを教えてやって欲しいんや。そいつらの近くに行ってやれんワシの代わりにな」

いか様は、そう言い残していつもの水槽へと戻っていった。今日はある意味、競艇をやっているところを見付かって良かったのかもしれない。勿論、慌ててパソコン画面を閉じたのも、少なからずやましい気持ちが私にもあったからだ。人を欺いても自分を欺くことはできない。成功には自分と正直に向き合うことが必要だ。ギャンブルをしない代わりに得られる時間を成功のために投資しよう。私はそう心に誓った。

 

[第3話につづく]

 

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